白坂和彦他との大麻論争(9)

982. 伊藤学 2010年03月19日 22:01
930. オダ

>大麻は危険ではないとWHO(世界保険機構)が立証されている大麻厚生労働省はWHOの正しい資料を国民に知らせない姿勢こそが間違っているとは考えないんですか?

ここを読んでいる人が誤解したらいけないから、間違いは指摘しておく。結論からいうとオダさんが言うような内容の資料を世界保健機関(WHO)は過去に発表したことはない。あるならソースをきちんと提示してごらん(因みに「大麻はアルコールやタバコより安全という内容のレポートの発行を、政治的な圧力によりやめた」という都市伝説はあるが、WHOが公式にこれを否定したことはある)。

厚生労働省がWHOの資料を国民に知らしめていないというのも嘘。

国際機関による大麻関連の報告(厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/other/kokusaikikan.html


983. 伊藤学 2010年03月19日 22:04
(続き)
大麻:健康上の観点と研究課題(抜粋)(WHO,1997)
大麻使用の急性の健康影響>
大麻使用の急性効果は長年認識されているが、最近の研究は、以前の調査結果を確認し、進展させた。これらは次のように要約されるであろう。
大麻は関連するプロセスを含め、認知発達(学習の能力)を障害する。学習と回想の両方の期間で大麻が使用されるとき、以前学習した項目の自由な回想はしばしば損なわれる
大麻は、幅広い種類の作業(自動車運転など)、注意の分配、及び多くのタイプの作業課題における運動神経を損なう。複雑な機械に関わる人間のパフォーマンスは、大麻に含まれるわずか20mg のTHC の吸引後、24 時間にわたって損なわれる可能性がある。大麻に酔って運転する人々の中には自動車事故のリスクが増加する。


984. 伊藤学 2010年03月19日 22:05
(続き)
大麻使用の慢性的な健康影響>
大麻の慢性使用は以下を含む追加的な健康被害を引き起こす
・注意と記憶のプロセスに関する様々なメカニズムで、複雑な情報の組織化と統合を含む認知機能の選択的障害
・長期間の使用は、より大きな障害につながる恐れがあり、使用を中止しても回復しないかもしれず、日常生活機能に影響を及ぼすかもしれない
大麻の制御不能で過剰な使用に特徴付けられる大麻依存症の進展は、恐らく慢性の使用者中に存在するであろう
大麻の使用は統合失調症患者の病状を悪化させるかもしれない
・気管と主要な気管支の上皮の損傷は長期の大麻喫煙で引き起こされる
・気道の損傷、肺の炎症、および長期の間の持続的な大麻の消費からの悪影響に対する肺の防御力の低下
・重度の大麻使用は、禁煙群と比べてより高い慢性気管支炎の兆候の蔓延とより高い急性気管支炎の発生に関係している
大麻使用は妊娠中に胎児の発育における出生時の体重減少に通じる障害に関連している。
・より多くの研究がこの領域で必要だが、妊娠中の大麻使用は出生後のまれな形態のがんの危険性につながるかもしれない。

注意)菅田さんの「大麻運転全然oK」というのも大嘘。


985. 伊藤学 2010年03月19日 22:06
(WHOの現在のサイト)
http://www.who.int/substance_abuse/facts/cannabis/en/
見解は上記と変わらず。


986. 伊藤学 2010年03月19日 22:14
白坂さんたちに質問がある。大麻の少量所持だけで刑務所行きという厳罰を科すのは重要な人権問題であると本当に認識していて、また、大麻の普及を目指すものでないというのが本当であるならば、666でも指摘したとおり、以下のような主張をするべきだと思う。国民、立法、行政にとってはるかに受け入れやすいという面で、「少量所持=刑務所行き(実際は執行猶予や不起訴が相場なのでこれも主張として疑わしいのであるが)」を早急に解決しうるいい提案だと思うけど。

、「大麻をはじめとする薬物の蔓延を防止するため、末端の使用者を厳罰に処するのはそれほど効果がないと考えられるところ、末端の使用者に対する罰則を緩和し、末端の使用者の取り締まりに係るリソースを、組織犯罪を含む供給者への取り締まりにあて、この一層の強化を図る。また、大麻供給者に対する大麻の栽培、密輸入、流通に係る罰則を厳格化する。」


987. 伊藤学 2010年03月19日 22:22
大麻を自由に喫食する権利(?)が、憲法十三条の幸福追求権に含まれるか否かという問題は、幸福追求権が保障する権利が如何様なものなのか、によって答えが異なるが、「人格的生存に不可欠なもの」に限られるというのが多数説であり、「人に迷惑をかけない限りなんでもあり」というのは劣勢。従って、「大麻を自由に喫食する権利は憲法十三条が保障する幸福追求権に含まれることは自明」というのは言い過ぎで、これを通そうとするなら、多くの困難を伴うことになると思う。

芦部憲法を読むか、人格的利益説、一般的利益説、幸福追求権等のキーワードで調べてみて。


988. 伊藤学 2010年03月19日 22:28
重要なので671を再掲。

    • -

大麻は酒・タバコより安全」っていう時に決まって出てくるのが、Development of a Rational Scale to Assess the Harm of Drugs of Potential Misuseっていう論文(http://www.mapinc.org/drugnews/v07/n366/a01.html)で、白坂さんもこれ読めって昔言っていたんだけど、ドラッグを相互に比較した結果、危険度が高い順に、アルコール>タバコ>大麻LSD>エクスタシー(MDMA)となっている。
http://www.mapinc.org/images/LancetFigure1.gif

これをどう見るかは各自の自由だけど、押尾の事件を思い出すと、「大麻は酒・タバコより安全」っていう主張を無批判に受け入れるのはちょっとね、と私は思ってしまう。ご参考まで。

    • -

(コメント)身体への作用・影響が異なるドラッグを一直線上に並べて比較するのはそもそも抵抗感があるところだし、仮に方法が適切と認めるにしても「大麻LSDやMDMAより危険じゃん。」という話にしかならないと思うけど、誰もそれを言わない。理性的に考えるなら。


989. 伊藤学 2010年03月19日 22:34
今現在大麻が禁止されている日本において、山崎さん一人が法律を犯して自家消費用に大麻を不法に輸入したからといって、誰にも迷惑をかけていないように一見見える。だからといって、公然と社会のルールを破った山崎さんにペナルティを与えないというのであれば、社会のルールを真面目に守っている大多数の国民と衡平が取れない。また、何らペナルティを科されないからといって、皆が皆、勝手な判断で社会のルールを公然に破るようになったら、安全かつ平穏に暮らしたいという大多数の国民の願いを脅かしかねない。だから、社会のルールに従って、淡々とペナルティを与えられなければいけない。


990. 伊藤学 2010年03月19日 22:35
673. National Geographic

パート1だけみました。長いのでちょっと時間下さい。


991. 伊藤学 2010年03月19日 22:39
医療大麻の有用性の議論と嗜好用大麻解禁の議論は直接リンクしないので、そこは注意すべき。アメリカ医学会は医療大麻の効能については肯定的な見解を示しているが、喫煙大麻は一層の取締の強化をすべき、と主張している。

http://dare.com/home/DrugInformation/documents/MedicalMJFactSheetv2.pdfの2枚目


992. 伊藤学 2010年03月19日 22:45
986の補足

この板でも出てきたデンマーク、ドイツでは大麻の供給者に対しては懲役の対象(ドイツ5年以下の懲役、デンマーク12年以下の懲役等。フランス密輸入で無期3懲役)。だから、986の提案って、欧州並の規制にすべしという白坂さんの主張に合致している。


993. 伊藤学 2010年03月19日 22:48
1000スレッド近く費やして議論がまったくかみ合わないのは、議論の前提すらかみ合っていないから。信頼にたるソースを示しながら議論するべきだし、そうすれば議論もより深まるでしょう。(984で指摘したとおり、菅田氏のようにいい加減な知見に基づいた発言は論外だと思う)