(シリーズ)白坂和彦(大麻報道センターTHC)他との大麻論争(19)

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論点5 大麻を使用する危険性を十分認知した個人が、大麻を楽しむのは自己責任の範疇と考えられます。国が法律で禁止するのは、過剰な干渉ではないですか。

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(答え)
 大麻の喫食により、まわりの人間に直接危害を与えることが少なくても、大麻の売買は、犯罪組織に対し活動資金を提供し、これを養い、太らせることにつながりかねません。公共の福祉に明確に反しますので、規制を続ける十分な根拠になります。

 以上で論点5の答えは完結しましたが、嗜好目的で個人が大麻を喫食しても、他の誰に迷惑をかけることはない、といった主張もありましたので、仮にこの主張を受け入れたとして、回答してみましょう。

 そもそも、すべての個人が大麻を使用する危険性を十分認知できるわけではありません。厳しい制裁を受けることは明白なのに軽い気持ちで大麻に手を出す人が後を絶たないことをみても、明らかです。ましてや、大麻の危険性については医学的な知見を今現在も積み重ねている状態ですから、判断力を十分持った個人でも、大麻使用の危険性について、本人の意に反し、見誤ることも十分考えられることです。

 ここで重要なのは、「大麻を使用する危険性を十分認知した個人が大麻を楽しみたいという願望」と「大麻を使用する危険性を必ずしも十分に認知できない個人の安全」のどちらをより重くみるべきか、ということだと思います。クーリングオフ制度、利息制限法、預金保護制度等の導入をみてもわかるとおり、我が国の政策のトレンドは、当事者の自由取引と自己責任に委ねるよりも、当事者に対し一定の負担を強いることになったとしても、消費者(国民)の経済的利益を極力保護しましょう、というものです。従って、「大麻を使用する危険性を十分認知した個人が大麻を楽しみたいという願望」をより重視すべき、といった国民のコンセンサスを得るのは極めて困難ではないか、と考えています。