ウィキリークスネタに便乗した読売新聞による、民主党に対する印象操作

米国務次官補、民主の北朝鮮政策に懸念(読売)

 【ワシントン=小川聡】キャンベル米国務次官補が2月にソウルで、現外交通商相の金星煥(キムソンファン)・大統領外交安保首席秘書官(当時)と対北朝鮮政策を巡り会談した際、日本の民主党政権について、「北朝鮮と予備交渉する時にはソウルやワシントンと協調して行うことが重要だ」と述べ、日米韓の協調に懸念を示していたことがウィキリークスの公開した文書でわかった。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101130-OYT1T00726.htm/

「協調して行うことが重要だ」の下りは事実であるとしても、キャンベルが「懸念を示していた」というのは、果たして本当か。原文にあたってみる。

U.S.-Japan Relations

6.Kim concurred with Campbell’s assessment that the DPJ was “completely different” from the LDP and agreed it was important for the DJP to coordinate with Seoul and Washington as it made preliminary overtures to Pyongyang. The North Koreans, Kim said, were clearly using several different channels to “knock on the DPJ’s door.” Kim acknowledged Campbell’s point that it was important to reach out directly to key DPJ officials like Foreign Minister Okada and Finance Minister Naoto Kan.

http://cablegate.wikileaks.org/cable/2010/02/10SEOUL290.html/

キャンベルが確実に言ったと思われるのは、(1)民主党自民党とは全然違う政党だ、(2)民主党北朝鮮と予備交渉する際には、米韓との調整が重要だ、(3)北朝鮮は複数の手段で民主党首脳のアプローチしようとしている、(4)(米韓は)民主党首脳のうち、キーパーソンと思われる菅直人副総理兼財務大臣(当時)、岡田克也外務大臣(当時)と直接的なコンタクトの手段確保が重要だの4点で、公電が伝えるキャンベルの発言内容は価値中立的だ。そこを敢えて読売は「懸念」としているわけであるが、広辞苑によれば、「懸念」とは「気にかかって不安に思うこと、心配」を指す、どちらかと言えばネガティブなコンテクストで用いられるものである。読売は、公電が伝える価値中立的なニュアンスを、敢えて、否定的に捻じ曲げて伝えようとしているようにも感じられる。

先般の尖閣諸島ビデオ流出に際し、和製マスメディアが、海上保安官から、まったく無視された事情がよく分かるというものだ。