レアメタルを巡る米国と中国の戦い?(ニューヨーク・タイムズの最新記事より)

 4月21日放送「そうだったのか!池上彰の学べるニュース」で、「そうだったのか!中国のアフリカ進出」という特集が組まれました。レアメタルの大生産地である中国が、自国のレアメタルを温存しつつ、援助の見返りとして、大量のレアメタルや石油をアフリカから奪取している様が紹介されていました。ちなみに、レアメタルは携帯電話をはじめとする精密機器の製造に不可欠な物資であり、もし枯渇などすれば、我が国の製造業にも大きな影響があるものと考えられます。

 密接に関連する内容として、22日付ニューヨーク・タイムズ”Challenging China in Rare Earth Mining” という記事が掲載されましたので、その要点をクリップします。

  • 中国のレアメタル産出シェアは97%。海軍のレーダー、戦車のナビゲーションシステムをはじめとする米国の軍事機器すら、中国で産出するレアメタルに依存している状況。
  • レアメタルの市場価格が近年高騰。2007年、セリウム(ガラスの研磨剤や化学工業の触媒に使用)の価格は2倍、ネオジム(永久磁石の原料でハードディスクのヘッド等に使用)の価格は5倍に高騰。
  • 中国製のレアメタルが市場を圧巻している理由は、(1)中国における労働者人件費が小さい、(2)レアメタルの採掘に伴う放射性物質を含む排水を垂れ流しにする等環境保全のためのコストを殆どかけていない等の理由により、主要産出国であるアメリカ、オーストラリア、カナダ、南アフリカ共和国と比較し価格優位性がある
  • 中国政府は、同国からのレアメタルの輸出を厳しく制限。輸出割り当て量を減らすとともに、5品目の輸出禁止を提案(施行には至っていない)
  • アメリカのレアメタル製造会社が、事業の立て直しのための財政的な支援を米政府に求めるとともに、コスト面で中国国営会社に対抗すべく、最新技術の導入や様々なコスト削減策を講じているが、事情通は前途多難と分析。米会社では、エンジニアが既に退職する等、技術を担う人材の流出が顕著である一方、中国会社は米会社の技術者のヘッドハンティング等により数多くの研究者を擁している。