前原国土交通大臣の「省エネ住宅構想」について考える。

京都議定書初年度(2008年)は、見事に6%削減を達成しました。特に産業部門、業務部門の努力が大きかったようです。一方、家庭部門、運輸部門の温室効果ガス排出量は1990年比で、かなり増加しました。

 家庭部門の温室効果ガスの削減のため、エコポイント制度による家電の省エネ化が強力に進められてきました。次なる策は、冷暖房、給湯で相当のエネルギーを消費する住宅構造や設備に注目しようということで、前原国土交通大臣は2020年までには、新築物件すべてが省エネ住宅となるよう規制措置を検討する、としています。

 あの手この手で温室効果ガスを削減しようとする姿勢は一定の評価はされますが、果たして、エコポイント制度や住宅版エコポイント制度、今回前原大臣が提唱した住宅構造や設備のエコ化が、どの程度の費用対効果を有するのか、これが最善の方法なのか、について、直接的に判断する材料がありません。

 東京都の資料(家庭部門の CO2 排出の現状・特性)によれば、4人世帯1人あたりのCO2排出量は、約1000kgです。欧州における二酸化炭素排出権取引価格は1トンあたり5,000円。だとすると、1世帯あたり年間2万円ということになります。

 住宅構造や設備のエコ化により、家庭部門のCO2がどの程度削減されるかは定かではありませんが、家庭部門のCO2全部を削減するための費用が年間2万円に過ぎないのだとすると、多額の初期投資を必要とする、住宅構造や設備のエコ化というのは、費用対効果性に優れた施策とは言えないような気もします。

 もっとも、国民が汗水たらして納めた税金を、「排出権を買う」という名目で外国に渡していいのか、という議論もあり得るでしょう。それよりも、建築業や設備業といった国内産業に対する内需喚起を政策として人工的に行った方が、国民マクロ経済的としては良い、という政策判断もあり得るでしょう。

住宅の省エネ基準義務化へ、法的措置を検討 前原国交相(朝日新聞)


http://www.asahi.com/politics/update/0416/TKY201004160331.html/