実は、生体肝移植寄付金問題は東京医大だけを責めれば済むという話ではない。

 東京医大が、生体肝移植に引き続き、腎臓移植でも手術前に患者に寄付金をせびっていたとの報道がありました。

 東京医大が説明する「医療振興」の目的として妥当かどうかは分からないが、保険が効く診療報酬額以外に、いろいろ物入りが発生する、というのは理解できる話です。混合診療と認定され手術全部無保険になるリスクを避けつつ、できるだけの手当をしようという、生きた智恵だったのかも知れません。

 まずいのは、「手術後」でなく「手術前」に寄付金をせびったことだ。しかも、寄付金の額が「随意」とくれば、患者の家族らを「寄付金を出さないと適切な処置を行ってくれないかも知れない」と不安にさせても、仕方がない面もあります。説明不足については東京医大の責任は免れ得ないと思います。

 ごく限られたケースをのぞき、保険内診療と保険外診療の混合が禁止されているといった規制のせいで、大学病院等が患者に対して、高度な医療サービスを提供できない、といった課題もあるやに聞きます。

 確かに混合診療を無限に認めれば、金銭的な事情で、医療サービスにアクセスできる者とできない者との間の格差を生むおそれはあるでしょう。だからといって、一律に混合診療を禁止するといった悪平等施策を継続すれば、本来救われた筈の命や副作用による健康被害が生じないとも限りません。

 効率性と平等の二律背反をはらむ難しい問題だと思いますが、長妻厚生労働相をはじめ、厚生労働省政務三役のリーダーシップに期待したいところです。

腎臓移植患者からも寄付金、3年で190万円(読売新聞)9:34訪問

 

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100429-OYT1T00091.htm/