【連載】大麻の論点(2):大麻は本当にアルコールより安全?

論点2 「大麻やアルコールやニコチンと比較して安全である」というのは本当ですか。

 そのように断言できる程の材料は殆どありません。解禁派の方が提示してきた論文は自己の主張に都合の良いものと言わざるを得ず、それだけを根拠に議論することは出来ません。また、伊藤学他が既に提示した、大麻使用の危険性を指摘した複数の論文に対して、大麻解禁派の方は有効な反証をこれまで行ってきませんでした。

 ランセット等有名医学論文誌に掲載されたことをもって、「大麻やアルコールやニコチンと比較して安全である」のが定説だとみなす方が多く、この議論に大量のスレッドを費してきました。

 勿論、「有名医学論文誌の掲載」=「学説として定着した・証明された」ではありません。90年代の経済学の知見が十分でなかった、あるいは、後に誤りが判明したこともあった、というのは、既に皆さんの知るところですし、同一の論文誌に相反する主張や仮説が、ほぼ同時に掲載されるのは、よくあることです。どのような学説にしろ、学会内の厳しい議論の応酬を経てはじめて、「定着した・証明された学説」認められるはずなのですが、「大麻やアルコールやニコチンと比較して安全である」ことを主張した論文の中に、その段階に至ったものは今現在、ありません。

 また、大麻が医薬品としてごく限られた状況で有用であったとしても、それを喫食しても人体にとって安全である、というわけではありません。アヘンから製造したモルヒネは、使用する条件により医薬品として有用であることは既に広く知られていますが、だからといって、アヘンやヘロインが決して安全な薬物であるとは言えないことを考えれば、明らかだと思います。

 更に、「大麻の急性毒性や依存性の低さ=大麻は安全」と主張する方も多かったですが、ドラッグの危険性を評価する指標は、急性毒性や依存性に限りませんので、短絡的な結論を得るようなことがないよう、注意が必要だと思います。